◆〔Mon〕Beyond the Border

イラク北部より戻りました。

----------------------------------------------------------------------------------- 月曜日更新担当、国際人道支援組織ジャパン・プラットフォーム(JPF)からの
受講生チーム"Beyond the Border"より
受講生・椎名さんの更新です!

※KAPLANと国際人道支援組織JPFは、連携プロジェクトとして日本の情報発信力UP!「国際人道支援における英語力強化プロジェクト」 を行っております。
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ジャパン・プラットフォームの椎名です。先日イラク北部へのモニタリング出張から戻りました。


ジャパン・プラットフォームは2003年から、イラク人道支援を続けてきました。今回イラクでの支援活動に一区切りをつけるにあたり、現地で実際に事業の成果を確認し、総括報告書を作成して今後の活動に活かしていこうというのが今回のモニタリングの目的でした。私個人としてイラクは2003年のバグダッドに続き2回目ですが、イラク北部のクルド自治区を訪ねるのは初めてでした。


ジャパン・プラットフォームではこれまで、イラク・ヨルダン国境付近でのイラク難民キャンプの支援を皮切りに、イラク国内での生活支援物資の配布、学校修復、給水関連事業、医療物資支援などを、日本のNGOを通じて行ってきました。今回は特に、イラク北部でピースウインズ・ジャパンと言う日本のNGOの学校修復や診療所建設・修復、町や村での水タンク・水道管設置事業を視察しました。イラク国内では2003年からの戦争や混乱はもとより、その前の湾岸戦争や国内での政情不安により250万人以上の国内避難民(戦乱などで故郷から避難し、同じ国の中で避難生活を送る人々)が発生しているといわれており、ここ数年の水不足や基本的な生活インフラ(上水道や電気、医療や教育施設)の破壊・未整備もイラクの人々の生活を困難にしています。
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        支援現場への道のり                 建設された地方の診療所

現地に入ってまず直面するのは、猛暑でした。気温は日中45度前後まで上がり、町や村々をめぐって移動、支援した学校などの建築物の確認、現地の方々へのインタビュー、記録のための写真撮影、そして移動の繰り返しは体力をかなり消耗しました。現地の治安は比較的安定していたものの、現地滞在中近くのキルクークという町で爆発があり、常に警備の人間と行動しながらスケジュールを管理するのも大きな仕事のひとつでした。私は出張中だけでしたが、現地で実際に事業を実施した方々、特に日本人のスタッフの方々のご苦労がわかるような気がしました。


でもその苦労を吹き飛ばしてくれるのは、やはり現地の人々から寄せられる感謝の言葉です。現地の支援のニーズをしっかり把握して実施された事業は、実施後5年ほど経った今でも現地の人々によって有効に使っていただいていることが今回の調査で判りました。これは簡単なようで、実はかなり難しいことです。たとえば建設や修復をした学校や診療所は、そのメンテナンスに現地政府からの予算がほとんどついていないことが多く、学校の先生や診療所の医師・看護婦を含めた現地の方々が自分たちで施設のメンテナンスを行っているケースが見られました。また現地政府も支援された施設に発電機を入れたり、浄水剤を施設に配布したりするなど、施設をより有効的に活用しようとする動きも見られました。ただ外国から支援をするのではなく、話し合いを繰り返し現地の人々と一緒に問題を解決しようとする取り組みは、NGOの得意とすることです。現地の支援関係者から「私たちは支援活動を"Complement"する形で行っているのだ」という言葉を聞くことが出来たのは、大きな収穫でした。


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                建設された学校                        学校の内部

私が現地を視察させていただく中で、「サラセミア」(地中海性貧血症)の患者のための診療所を視察した日のことです。ジャパン・プラットフォームの支援を受けた日本のNGOが診療所を建設し、現地の保健局を通じて現地の医師が治療を行っているのですが、医療にはお金がかかり、イラク国内で手に入らない医療品も存在していることがわかりました。輸血を受けている患者の方々をお見舞いしながら、診療所の所長は日本からの支援に深く感謝の意を述べるとともに「私の患者の一人で、英語の教師になった患者がいます。」とまるで自分の子どもを自慢するかのようにおっしゃいました。私が「それはすばらしいですね。その方は今どうしていらっしゃるのですか?」とたずねると、所長はしばらく沈黙した後私から目をそらし、一言「彼女は先日なくなりました。」とつぶやくように私に答えたのを覚えています。
たとえばイタリアでは適切な診療を受け患者が50歳以上生存するケースもあるということですが、イラクでは患者がそこまで生きていくのはかなり難しいとのお話でした。この世の中では、人の命は平等に扱われることはむしろ少ないという事実とともに、私の質問に目を床まで落とし、「She died. Few days ago.」とつぶやいた所長の横顔が私の心に残りました。

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        建設された水タンク                 現地で水は貴重です

もちろんすべての事業がうまくいっているわけではありません。数年前に支援した活動地で、近年の水不足で水が出なくなってしまった井戸や、窓ガラスが割れたままの学校なども視察しました。事業が終わった後にはNGOと現地政府の間で引き渡し書を結んでおり、その後のメンテナンスなどは現地政府の責任であることは明白ですが、状況が日々変化し、治安の悪化などで現地の視察が難しい中での事業の難しさなども目にしました。支援のニーズは膨大であり、その中で何を優先的に行い、現地の方々にどのように長く支援を活用していただくかは、人道支援に関わる者にとって、いつも大きな課題となっています。


ジャパン・プラットフォームの支援活動の多くは、皆さんの税金によってまかなわれています。「ばら撒く支援」ではなく「現地の方々の活動を後押しさせていただく支援」の実現のため、今回のモニタリングは多くのものを学ばせていただく機会となりました。

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【ノン・フィクション】2009.06.15 (Mon)

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Posted By: 椎名 規之 on July 6, 2009

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